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陶器師の手の中で


2025/9月号                              No.85 


「陶器師の手の中で」


 芸術家は何かを創り出す時、そこに自らの思いを込めます。絵を描く人は、心にあるイメージをキャンバスに表し、音楽を奏でる人はその思いを旋律に託します。料理人は一皿の料理に愛情を注ぎ込むでしょう。そう考えると「創る」という行為は、単なる作業ではなく、その創り手の愛と魂がにじみ出る尊い営みです。もし、私たち人間がこのようにして何かを創り出すのだとすれば、人は誰に、どのように「創られた」のでしょうか。

 聖書では人間と創造主なる神との関係が陶器師と粘土に喩えられています。土を手に取り、水で湿らせ、指先で形を整えていく陶器師の仕事は、静かでありながら、深い思いと愛情に満ちています。粘土が、ろくろの上で少しずつ器のかたちとなっていく様は、まるで生命が吹き込まれていくかのようです。完成した器は、同じ型のように見えても、二つとして同じものはなく、それぞれが独自の表情を持っています。創造主なる神は、土の塊に息を吹き込み、愛情と時間をかけて、その優しい手の中で形って焼き上げ、私たちを造られました。

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私たちは粘土で、あなたは私たちの陶器師です。私たちはみな、あなたの手で造られたものです。(イザヤ64:8)


 そのように造られたにもかかわらず、私はクリスチャンになっても、よく神に文句を言っていました。「神が陶器師であられるなら、どうして私をこんな器にお造りになったのですか?」と。私は周りの人と自分を比較していました。他の器(人)はみんな自分より素晴らしい器に見えたからです。

 私たちは、人生がうまくいかない時や、自分の思うようにならない時、神が自分にしてくださったことに文句を言いたくなるときがないでしょうか。


 あるところに、一人の人がいました。その人の名前は、トウキ君です。神様という名の陶器師の手の中で、トウキ君は愛情たっぷりに丁寧に形作られていました。神様はトウキ君に、美しい曲線を与え、優雅な模様を描きながら言いました。

「お前は素敵な花瓶になるんだよ。窓辺に置かれて、季節の花を飾り、多くの人を癒す存在になるだろう。」


しかし、このトウキ君は、彼の隣にあった別の作品を見ながら、神様に注文をつけました。「うーん…なんか違うんですよね。もっとこう…どーんと大きくて存在感があるやつ。ほら、あれ見てくださいよ、あの真っ白で堂々とした器!僕も、あれになりたいです!」トウキくんは、それまでその器を見たことがなかったのです。


神様は静かにうなずき、こう言いました。

「本当に、あれになりたいのかい?」

「はい!だってあれ、すごく立派じゃないですか!白くてピカピカしてて、とっても素敵なので」


神様は、優しく静かにトウキ君にこうつぶやきました。

「よいだろう。お前の願いをかなえよう」

時が経ち、トウキ君は夢にまで見た、あの立派で真っ白な器に生まれ変わりました。彼はついに“あれ”になったのです。そう、トイレの便器に。この後、便器が何であるかを知ったトウキ君は文句を言いました。「えっ、これは嫌です。こんなつもりじゃなかった!」と。

でも神はトウキ君にこう言われました。「便器はね、誰もが必要とする大切な器なんだよ。清潔であることも求められる。だから私はお前を、人にとってなくてはならない大切なものを心をこめて造ったんだ。」


人間が「自分の思いどおり」に神を動かそうとする時、神はこう問われます。

「人よ、いったいあなたは、神に対して何者ですか。造られた者が造った者に、『なぜ私をこのように造ったのですか』と言えるでしょうか。陶器師は、同じ粘土の塊から、ひとつを尊い用途に、ひとつを卑しい用途に作る権限を持っていないのでしょうか。ローマ(9:20~21)


 私たちは、人生の中で周りと自分を比べたり、自分の人生に疑問や不満を持つことがあるかもしれません。でも、神は見栄えではなく「役割と使命」を考えて器を造られます。誰にも見られないところで誰かを支える、そんな器がどれほど尊い作品であるかを神はご存じです。

 私たちは神の御手の中にある粘土です。どんなかたちにでも、神が造ってくださったなら、それは自分に最もふさわしい「器」なのです。

 また、神は私たちを最初から完璧に創るのではなく、成長できるように導いてくださいます。どんなに傷ついても、失敗しても、最終的には神の優しい手の中で美しく成長することができるのです。そして、そのプロセスこそが私たちの「幸せ」なのだと言えます。神の手によって創られた一つ一つの人生は、すべてに意味があり、最終的には最高の形に仕上げられるのです。

 私たちができることは、今の自分を大切にし、過去の出来事を悔やむことなく、神に委ねて歩んでいくことです。それを心からできたらどんなに素晴らしい人生となることでしょうか。


このテーマの礼拝メッセージはこちらから


ぶどうの木国際教会

ハワイホームチャペル

加藤 あや子




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